今回は、「法律のひろば」という法律雑誌に興味深い記事がありましたので、記事にさせていただきたいと思いました。
「税理士の顧問契約上の義務の範囲と債務不履行の成否」
(東京地判平成24年3月30日判タ1382号152頁)
雑誌の通りに紹介しますと法律に精通していらっしゃらない方には非常に読みにくくなっておりますので、これを砕いて説明しますと、某会社Xに顧問契約を締結した税理士法人Yは、その顧問契約の内容を税務に関する業務(税務代理及び税務署類の作成業務、税務調査の立会および税務相談)及び会計業務(会計処理に関する指導及び相談並びに財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行)に限定して契約を締結しました。ところが、Xは消費税法上の書類を届出なかったことで、税金支払い控除の機会を逃し、甚大な損害を被ってしまいました。それに対して、XはYが顧問についていたにもかかわらず、経営コンサルティングを十分に行わなかったことを理由にYを提訴したという事案です。
判旨としては、「本件顧問契約において、①契約書上の委任業務の範囲は、税務代理及び税務署類の作成、税務調査の立会、税務相談、会計処理に関する指導及び相談、財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行と定められており、原告の税務に関する経営コンサルタント業務(いわゆる税務に関する経営コンサルティング業務)まで含むとは定められていないこと、②XはYに対して委任業務の遂行に必要な資料等を提供する責任を負うものと定められていること、③顧問報酬は月額2万円と比較的低廉であること」(上記、数字(①、②、③)につき筆者挿入)から、「Yにおいて、Xに対し、Xの業務内容を積極的に調査し、又は予見して、原告の税務に関する経営判断に資する助言、指導を行うべき義務は原則としてないものと」しました。
シンプルに本件を考えると上記のようになるかと思います。
Yとしては、当初に締結した顧問契約条件から大きく離れる行為まで責任を負う必要はない、つまり本事案では顧問契約を締結した専門家が保護されているわけです。
ここからは推測ですが、このような税務に関する業務及び会計業務は税理士の基本となる業務であり、上記について特定した契約書を作成することは一般的であると思われます。そうはいうものの、顧問契約を結ぶ間柄ですので例えば、口頭で経営に関する助言をするとまで言わなかったのかが問題になるような気がします。判例によると、このようにYがXに対してそのような期待可能性を抱かせることで、Yが責任を負う可能性も高いことを示し、判決理由を一部留保しています。
私もお客様と業務に関する契約書を締結する際には、リスクや契約守備範囲をしっかりと説明する責任が士業にはあるのではないかと考えさせられた次第です。
「税理士の顧問契約上の義務の範囲と債務不履行の成否」
(東京地判平成24年3月30日判タ1382号152頁)
雑誌の通りに紹介しますと法律に精通していらっしゃらない方には非常に読みにくくなっておりますので、これを砕いて説明しますと、某会社Xに顧問契約を締結した税理士法人Yは、その顧問契約の内容を税務に関する業務(税務代理及び税務署類の作成業務、税務調査の立会および税務相談)及び会計業務(会計処理に関する指導及び相談並びに財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行)に限定して契約を締結しました。ところが、Xは消費税法上の書類を届出なかったことで、税金支払い控除の機会を逃し、甚大な損害を被ってしまいました。それに対して、XはYが顧問についていたにもかかわらず、経営コンサルティングを十分に行わなかったことを理由にYを提訴したという事案です。
判旨としては、「本件顧問契約において、①契約書上の委任業務の範囲は、税務代理及び税務署類の作成、税務調査の立会、税務相談、会計処理に関する指導及び相談、財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行と定められており、原告の税務に関する経営コンサルタント業務(いわゆる税務に関する経営コンサルティング業務)まで含むとは定められていないこと、②XはYに対して委任業務の遂行に必要な資料等を提供する責任を負うものと定められていること、③顧問報酬は月額2万円と比較的低廉であること」(上記、数字(①、②、③)につき筆者挿入)から、「Yにおいて、Xに対し、Xの業務内容を積極的に調査し、又は予見して、原告の税務に関する経営判断に資する助言、指導を行うべき義務は原則としてないものと」しました。
シンプルに本件を考えると上記のようになるかと思います。
Yとしては、当初に締結した顧問契約条件から大きく離れる行為まで責任を負う必要はない、つまり本事案では顧問契約を締結した専門家が保護されているわけです。
ここからは推測ですが、このような税務に関する業務及び会計業務は税理士の基本となる業務であり、上記について特定した契約書を作成することは一般的であると思われます。そうはいうものの、顧問契約を結ぶ間柄ですので例えば、口頭で経営に関する助言をするとまで言わなかったのかが問題になるような気がします。判例によると、このようにYがXに対してそのような期待可能性を抱かせることで、Yが責任を負う可能性も高いことを示し、判決理由を一部留保しています。
私もお客様と業務に関する契約書を締結する際には、リスクや契約守備範囲をしっかりと説明する責任が士業にはあるのではないかと考えさせられた次第です。
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